ビジネスシーンでよく耳にする「書式」と「様式」。
この二つの言葉、似ているようで実は意味が違うんです。
ざっくり言うと、「書式」は文章の見た目を整えるデザインや装飾、「様式」は定められた文書の型や骨格そのものを指します。
この違いを知っていると、書類作成がスムーズに進みますよ。
例えば、「この様式で提出してください」と言われたときに、見た目だけ真似しても意味がない、ということが分かります。
この記事では、そんな「書式」と「様式の違い」を、具体的な例を交えながら分かりやすく解説します。
雛形やテンプレートといった似た言葉との違いもスッキリ整理していくので、もう迷うことはありません。
この記事を読むと分かること
- 書式と様式の意味の根本的な違い
- 報告書や申請書など、具体的な文書での使い分け例
- 雛形・テンプレート・フォーマットとの違い
- ビジネスシーンで「様式に従って」と言われたときの正しい対応
- 無料で使えるビジネス文書テンプレートの入手先
書式と様式の違いは「装飾」か「骨格」か
書式と様式の違い、分かっているようで意外と説明が難しいですよね。
この二つの根本的な違いを理解するキーワードは、「装飾」と「骨格」です。
つまり、文書の見た目を整えるのが「書式」で、文書の構造や決まった型そのものが「様式」と考えると分かりやすいでしょう。
ここでは、それぞれの言葉が持つ本来の意味や、実務でどちらが優先されるのかについて、比較表も使いながら詳しく見ていきます。
この基本さえ押さえておけば、今後の書類作成で迷うことがぐっと減りますよ。
書式と様式の意味の違いが一目でわかる比較表
まずは、書式と様式の違いを比較表で見てみましょう。
項目 | 書式 | 様式 |
指すもの | 見た目、デザイン、装飾 | 決まった型、骨格、構造 |
役割 | 文章を読みやすく、見栄え良くする | 内容を定められた形式で伝える |
具体例 | フォント、文字サイズ、色、余白、行間 | 申請書、届出書、履歴書、請求書 |
英語 | format, style | form, style |
自由度 | 比較的高い(相手への配慮は必要) | 低い(指定に従う必要がある) |
イメージ | 服のコーディネート | 制服 |
このように、書式は個人のセンスでアレンジできる部分、様式は誰もが従うべきルール、と考えるとイメージしやすいですね。
「書式」とは文書の“見た目”を整えるもの
「書式」とは、文書の見た目に関するルールのことです。
例えば、文字のフォントや大きさ、色、太字にするかどうかといった文字の装飾が挙げられます。
ほかにも、文章の配置(中央揃えや右寄せ)、余白の広さ、箇条書きのスタイルなども書式に含まれます。
目的は、文書を読みやすく、そして見栄え良く整えることです。
内容が同じでも、書式が整っているだけで、相手に与える印象は大きく変わります。
「書式は自由です」と言われた場合でも、相手が読みやすいように配慮するのがビジネスマナーといえるでしょう。
「様式」とは文書の“骨格”を定めるもの
一方、「様式」とは、文書の内容を記入するための、あらかじめ定められた「型」や「形式」のことです。
例えば、役所に提出する申請書や届出書、会社の経費精算書などがこれにあたります。
これらの書類には、「氏名」「住所」「日付」といった記入欄が、決まった場所に配置されていますよね。
この文書全体の骨格や構造が「様式」です。
様式は、情報を効率的に、かつ正確に収集・管理するために定められています。
そのため、個人的な判断で項目を勝手に変えたり、レイアウトを変更したりすることは基本的にできません。
定められたルールに厳密に従う必要があります。
どちらが優先される?実務での考え方
実務においては、多くの場合「様式」が「書式」よりも優先されます。
特に、行政への提出書類や、会社で定められた稟議書などでは、様式を守ることが絶対です。
様式が指定されている場合は、まずその型に従うことを第一に考えましょう。
その上で、文字の大きさやフォントなど、様式で特に指定されていない「書式」の部分を調整して、読みやすく整える、という順番になります。
もし「様式:A4、書式:明朝体11pt」のように両方が指定されているなら、もちろん両方を守る必要があります。
まずは様式という骨格があって、その上に書式という装飾を施していくイメージを持つと分かりやすいです。
書式と様式の違いを具体的な文書例で比較
書式と様式の基本的な違いは理解できたでしょうか。
ここからは、さらにイメージを掴むために、もっと具体的な文書を例に挙げて比較していきます。
例えば、社内に提出する「報告書」と、行政に提出する「申請書」では、書式と様式のどちらが重要視されるかが異なります。
また、私たちが普段から使っているWordやExcelの機能に当てはめて考えてみるのも、理解を深めるのに役立ちますよ。
具体的なシーンを思い浮かべながら、二つの違いをしっかりマスターしましょう。
【書式の例】報告書の見栄えを整えるケース
報告書や企画書は、「書式」が重要になる代表的な文書です。
これらの文書には、会社で決められた「様式」(フォーマット)がある場合もありますが、多くは内容を分かりやすく伝えるための「書式」の工夫が求められます。
例えば、以下のような工夫が考えられます。
- 見出しを太字にして目立たせる
- 重要な部分の文字色を変える
- グラフや図を挿入して視覚的に分かりやすくする
- 余白を適切に設定してスッキリ見せる
これらはすべて、読み手が内容を理解しやすくなるようにするための「書式」の調整です。
内容は同じでも、書式次第で説得力が大きく変わることもあります。
【様式の例】行政に提出する申請書のケース
行政に提出する申請書や届出書は、「様式」が絶対的に優先される文書の典型です。
これらの書類は、法律や条例によって様式が厳密に定められています。
例えば、住民票の写しの交付申請書を思い浮かべてみてください。
氏名、住所、生年月日、必要な通数などを記入する欄が、あらかじめ決められた場所に印刷されていますよね。
これが「様式」です。
私たちは、この様式に従って必要な情報を正確に記入するだけであり、フォントを変えたりレイアウトを変えたりすることはできません。
もし間違った様式で提出すれば、受理してもらえないこともあります。
WordやExcelでの「書式設定」と「様式指定」の違い
WordやExcelを使っていると、「書式設定」という言葉をよく見かけますよね。
これは文字通り、フォントの種類やサイズ、色、セルの塗りつぶしなど、見た目を整える「書式」を調整する機能です。
一方、Excelで会社が用意した経費精算のファイルを使う場合を考えてみましょう。
そのファイルには、日付、項目、金額などを入力する欄が決められていて、数式もあらかじめ入っています。
これは、会社が定めた「様式」です。
私たちはその様式(ファイル)を使って中身のデータを入力するだけです。
このように、普段使っているソフトの機能に当てはめてみると、書式と様式の違いがより具体的に理解できます。
雛形やテンプレートとの違いは?
書式や様式と似たような言葉に、「雛形(ひながた)」や「テンプレート」があります。
これらも書類作成の際によく使われる言葉ですが、それぞれ少しずつニュアンスが異なります。
ビジネス文書をスムーズに作成するためには、これらの類義語の意味も正しく理解しておくことが大切です。
ここでは、書式や様式と、雛形、テンプレート、そして「フォーマット」との違いを解説します。
それぞれの言葉の使い分けが分かれば、上司や取引先とのやり取りも、より円滑になりますよ。
「雛形(ひながた)」との意味の違い
「雛形」とは、手本となる見本やサンプルのことです。
多くの場合、具体的な内容がある程度書き込まれた状態の文書を指します。
例えば、「契約書の雛形」といえば、一般的な契約条項がすでに記載されていて、あとは当事者の名前や日付などを書き換えれば使えるような、完成品に近いイメージです。
様式が「枠組み」や「骨格」であるのに対し、雛形は「具体的な内容例を含んだ見本」というニュアンスが強い言葉といえます。
一から文書を作成する際に、参考にするもの、という位置づけです。
「テンプレート」との意味の違い
「テンプレート」も雛形とよく似ていますが、より「繰り返し使える型」という意味合いが強い言葉です。
特に、WordやExcel、PowerPointなどで使われることが多く、穴埋め形式で必要な情報を入力すれば、すぐに文書が完成するように作られています。
デザインやレイアウト(書式)があらかじめ設定されていることがほとんどです。
「請求書テンプレート」や「議事録テンプレート」などがその代表例ですね。
様式が「形式のルール」そのものを指すのに対し、テンプレートはそのルールに基づいて作られ、すぐに使えるように用意された「道具」と考えると分かりやすいでしょう。
「フォーマット」との意味の違い
「フォーマット」は、非常に広い意味で使われる言葉です。
文書においては、「書式」や「様式」の両方の意味を含む場合があります。
例えば、「報告書のフォーマット」と言った場合、それは単に文字の大きさなどの「書式」を指すこともあれば、見出しの構成や記載項目といった「様式」を指すこともあります。
また、ITの分野では、データを保存する形式(例:JPEG、PDF)や、ディスクを初期化することを指すなど、文脈によって意味が大きく変わります。
ビジネス文書の文脈で「フォーマット」という言葉が出てきたら、それは書式のことなのか、様式のことなのか、あるいは両方なのかを少し気にしてみると良いかもしれません。
類義語の使い分けまとめ
ここまでに出てきた言葉の関係を整理してみましょう。
言葉 | 意味合い | 特徴 |
様式 | 骨格・型 | 守るべきルールのこと。行政文書などで使われる。 |
書式 | 装飾・デザイン | 見た目を整えるためのルールのこと。読みやすさに関わる。 |
雛形 | 見本・手本 | 具体的な内容例が入った完成品に近いサンプルのこと。 |
テンプレート | 定型・道具 | 穴埋めすればすぐに使えるように用意されたファイルのこと。 |
フォーマット | 型・形式 | 文脈によって書式や様式の両方を指す、より広義な言葉。 |
これらの違いを意識して使い分けることで、書類作成の指示を正確に理解したり、相手に的確な依頼をしたりできるようになります。
ビジネスシーンでの正しい使い分け方
書式と様式の違いが分かったところで、実際のビジネスシーンではどのように使い分ければ良いのでしょうか。
例えば、上司から「この様式に従って」と指示されたり、逆に「書式は問いません」と言われたりすることがあります。
それぞれのケースで、何をどこまで求められているのかを正しく理解することが、仕事の評価にも繋がります。
また、社内向けの文書と社外向けの文書では、意識すべきポイントも少し変わってきます。
ここでは、そんな実務で役立つ使い分けのポイントを見ていきましょう。
「様式に従ってください」と言われた場合の対応
「この様式でお願い」や「指定の様式に従ってください」と言われた場合、それは文書のレイアウトや項目を絶対に変えないで、という指示です。
単に見た目を似せるだけでは不十分です。
例えば、配布されたExcelの様式ファイルがあるなら、必ずそのファイルを使って作成します。
自分で一から同じ見た目のファイルを作ってはいけません。
なぜなら、元のファイルには見ただけでは分からない数式や設定が組み込まれている可能性があるからです。
まずは指定された様式をそのまま使い、その枠の中で情報を正確に入力することに集中しましょう。
書式の変更も、特に許可がない限りは避けるのが無難です。
「書式は問いません」と言われた際の注意点
「書式は問いません」や「書式は自由です」と言われた場合、基本的には見た目のデザインに厳しいルールはない、という意味です。
フォントの種類や文字の大きさ、色などを自分で決めて作成して構いません。
しかし、だからといって何でも良いわけではない、という点に注意が必要です。
一番大切なのは「相手にとっての読みやすさ」です。
奇抜すぎるフォントやカラフルすぎる色使いは、ビジネス文書にはふさわしくありません。
誰が見ても内容がスッと頭に入ってくるような、シンプルで整理された書式を心がけるのが、大人のマナーと言えるでしょう。
社内文書と社外文書での使い分けポイント
文書を誰に向けて作成するのかによっても、書式や様式の意識は変わってきます。
社内文書、例えば日報や簡単な報告書などでは、何よりも効率や分かりやすさが重視されます。
会社で決まった様式(フォーマット)があればそれに従い、なければ情報を簡潔に伝えることを第一に考えましょう。
凝った書式にする必要はあまりありません。
一方、取引先やお客さまに提出する社外文書では、丁寧さや信頼感が伝わることが重要です。
会社の公式な様式があれば必ずそれを使用し、書式も細部まで整える必要があります。
誤字脱字がないかは当然として、全体のバランスや見栄えにも気を配ることが、会社の顔としての役割を果たすことに繋がります。
【FAQ】書式と様式に関するよくある質問
書式と様式の違いについて、だいぶ理解が深まってきたかと思います。
最後は、多くの方が疑問に思う細かいポイントを、Q&A形式で解消していきましょう。
「英語ではなんて言うの?」「履歴書の場合はどっち?」など、具体的な質問に答えていきます。
ここで紹介する内容を知っておけば、いざという時に役立つ豆知識になりますよ。
日々の業務や、就職・転職活動などの参考にしてみてください。
書式と様式の英語表現は?
書式と様式は、英語では文脈によっていくつかの単語が使われます。
一般的に「書式」は “format” や “style” と表現されることが多いです。
Wordの「書式設定」は “Format” ですね。
一方、「様式」は “form” が最も近い言葉です。
申請用紙のことを “application form” と言うことからも分かります。
ただし、“style” は様式を指す場合もあり、例えば公的な文書のスタイルブック(表記のルールブック)を指すこともあります。
そのため、英語で表現する際は、 “format”(見た目の書式)なのか “form”(記入する様式)なのかを意識すると、意味が正確に伝わりやすくなります。
履歴書の場合は書式と様式のどちらを使う?
履歴書は、「様式」の一種と考えるのが一般的です。
JIS規格で定められた「履歴書様式例」があるように、氏名や学歴、職歴などを記入する欄が定められた「型」だからです。
市販の履歴書や、Webサイトからダウンロードする履歴書は、すべてこの様式に基づいて作られています。
企業から特に指定がない場合は、この一般的な様式を使えば問題ありません。
もし企業が独自の履歴書(エントリーシートなど)を用意している場合は、それがその企業指定の「様式」となりますので、必ずそれを使って提出しましょう。
契約書に定められた様式はどこで入手できる?
契約書は、法律で様式が厳密に定められているわけではありません。
しかし、記載すべき事項はある程度決まっています。
そのため、一般的には「雛形」や「テンプレート」を元に作成することがほとんどです。
これらの雛形は、インターネット上で無料でダウンロードできるものがたくさんあります。
例えば、中小企業庁のウェブサイトなど、公的な機関が提供しているものもありますし、弁護士が監修している法務関連の専門サイトにも信頼性の高いテンプレートがあります。
ただし、契約は非常に重要なものなので、テンプレートをそのまま使うのではなく、必ず自社の状況に合わせて内容を修正し、専門家に確認してもらうことをおすすめします。
官公庁の文書で「様式第1号」とあるのはなぜ?
官公庁のウェブサイトなどで、「申請書(様式第1号)」といった表記を見たことはありませんか。
これは、ある法律や規則に基づいて定められた、公式な申請書類の「1番目の様式」ですよ、という意味です。
法律や規則では、様々な手続きのために複数の書類(様式)を定めることがあります。
例えば、「様式第1号」が申請書で、「様式第2号」が変更届、「様式第3号」が完了報告書、といった具合です。
このように番号を振ることで、どの手続きにどの書類を使えば良いのかを、誰でも明確に識別できるようにしているのです。
この番号が付いている書類は、まさに「様式」の代表例と言えます。
無料で使えるビジネス文書のテンプレート入手先
ここまで読んで、さっそく書類作成に活かしたいと思った方も多いのではないでしょうか。
一から自分で作るのは大変ですが、質の良いテンプレートを使えば、見栄えも良く、効率的に文書を作成できます。
今では、無料で高品質なテンプレートを提供しているサイトがたくさんあります。
ここでは、様々なビジネスシーンで役立つテンプレートが入手できるサイトを、目的別にいくつか紹介します。
ぜひブックマークして、日々の業務に役立ててください。
ビジネス文書全般で使えるサイト
まずは、報告書、議事録、請求書、送付状など、幅広いビジネス文書のテンプレートが揃っているサイトです。
マイクロソフト社が提供している公式のテンプレートサイトは、WordやExcel、PowerPointですぐに使えるものが豊富で、安心して利用できます。
他にも、会員登録するだけで数多くのテンプレートがダウンロードできる、ビジネス情報サイトなどがあります。
まずはこういった総合的なサイトを一つ知っておくと、いざという時にとても便利です。
企画書・報告書に特化したサイト
社内向けの企画書や、お客様への提案書など、特にデザイン性が求められる文書を作る機会も多いですよね。
そんな時には、企画書や報告書のテンプレートに特化したサイトが役立ちます。
コンサルティング会社やデザイン会社が運営しているサイトでは、単におしゃれなだけでなく、構成が練られていて、説得力のある資料作りの参考になるテンプレートが見つかります。
グラフや図解が多く使われているものなど、自分の目的に合わせて探してみると良いでしょう。
契約書や法律関連に強いサイト
契約書や念書、内容証明郵便など、法律が関わる文書は特に慎重に作成する必要があります。
こういった専門的な書類については、弁護士や行政書士が監修している法律事務所や、法務関連のサービスを提供している企業のサイトからテンプレートを入手するのが安心です。
無料でも基本的な契約書の雛形を提供しているところは多いです。
ただし、先ほども触れたように、あくまで雛形は雛形です。
実際の契約に使う際は、必ず内容を精査し、必要であれば専門家に相談することをおすすめします。
総まとめ
書式と様式の違いまとめ
- 書式と様式の違いは、見た目の「装飾」か、骨格となる「型」かの違いです。
- 「書式」はフォントや文字サイズなど、文書の見た目を整えるルールを指します。
- 「様式」は申請書など、あらかじめ定められた文書の形式や構造のことです。
- 実務では、まず「様式」に従い、その上で「書式」を整えるのが基本です。
- 報告書は読みやすさを工夫する「書式」が、申請書は決められた「様式」が重要になります。
- 「雛形」は内容例が入った見本、「テンプレート」は穴埋め式の道具というニュアンスです。
- 「フォーマット」は書式と様式の両方を含むことがある広義の言葉です。
- 「様式に従って」と言われたら、レイアウトや項目を絶対に変えてはいけません。
- 「書式は自由」でも、相手への配慮として読みやすいデザインを心がけるのがマナーです。
- 履歴書は定められた「様式」の一種と考えます。
- 官公庁の「様式第1号」とは、法律で定められた1番目の公式書類という意味です。
- ビジネス文書の「テンプレート」は、無料でダウンロードできるサイトがたくさんあります。