旅行や出張の日に天気が悪いと、「飛行機はちゃんと飛ぶのかな?」と心配になりますよね。
飛行機が欠航するかどうかは、風速だけで決まるわけではありませんが、一般的に「風速15m/s」が一つの目安とされています。
しかし、実は風速の強さそのものよりも、「風の向き」の方が運航を左右する大きな要因なのです。
たとえ強風でも、風の向きによっては問題なく飛ぶこともあります。
この記事では、飛行機が欠航する風速の目安や、天候に関する様々な基準、そして万が一欠航になってしまった場合の対処法まで、あなたの不安を解消するための情報を分かりやすく解説していきます。
この記事を読むと分かること
- 飛行機が欠航する風速の具体的な目安
- 風速よりも「風の向き」が重要な理由
- 台風や大雪など、風以外の天候で欠航する基準
- 「条件付き運航」の意味と欠航が決まるタイミング
- 最新の運航状況の確認方法と、欠航時の手続き(振替・払い戻し)
飛行機の欠航は風速何メートルから?気になる基準を解説
飛行機が飛ぶか飛ばないか、その判断基準で最も気になるのが「風速」だと思います。
「風速何メートルになったら欠航するの?」という疑問は、多くの人が持つことでしょう。
ここでは、その気になる風速の目安や、なぜ航空会社がハッキリとした数値を公表しないのか、その裏側にある理由について解説していきます。
【結論】「風速15m/s」が欠航の可能性を高める一つの目安
はっきりとした基準はありませんが、一般的に「秒速15m(15m/s)」を超える風が吹くと、欠航の可能性が高まると言われています。
風速15m/sは、台風の基準(17.2m/s以上)に近い強さです。
気象庁の基準では「風に向かって歩けない、何かにつかまらないと立っていられない」ほどの強風にあたります。
ただし、これはあくまで目安の一つに過ぎません。
実際には、風速が10m/s程度でも欠航が決まることもあれば、20m/s近い強風でも問題なく運航することもあります。
最終的な判断は、風速以外の様々な要因を総合的に見て行われるのです。
なぜ航空会社は明確な基準値を公表しないのか
航空会社が「風速〇m/s以上で欠航します」と明確な基準を公表しないのは、運航の可否が風速だけで決まるわけではないからです。
パイロットや航空会社は、安全なフライトのために、以下のような多くの情報を総合的に分析して判断を下しています。
- 風の「向き」(横風、向かい風、追い風)
- 視界の良し悪し(雨、霧、雪など)
- 滑走路の状態(濡れ、凍結など)
- 機体の種類や大きさ
- パイロットの飛行経験や技量
これらの条件は常に変動するため、単純な数値で基準を示すことができないのです。
安全を最優先に、プロが総合的に判断しているということですね。
航空会社(JAL/ANA/LCC)や機体の種類による違い
運航の判断基準は、航空会社や機体の種類によっても異なります。
一般的に、JALやANAが保有するような大型のジェット機は、機体が重くパワーがあるため、ある程度の強風には耐えられます。
一方、LCC(格安航空会社)が主に運航する小型の機体は、大型機に比べると風の影響を受けやすくなります。
また、航空会社ごとに独自の安全基準を設けているため、同じ天候条件でも、A社は運航し、B社は欠航するというケースも起こり得ます。
どちらが良いというわけではなく、各社がそれぞれの基準で安全を第一に考えている結果なのです。
飛行機の欠航は風速の強さだけでなく「風の向き」が最大の理由
多くの人は「風が強いから欠航する」と考えがちですが、実はプロのパイロットが最も重視しているのは、風の強さよりも「風の向き」です。
特に、飛行機が最も神経を使う離陸と着陸の場面では、風の向きが安全性に直接関わってきます。
ここでは、飛行機と風の向きの、意外と知られていない関係性について見ていきましょう。
離着陸で最も危険視される「横風(クロスウィンド)」
飛行機にとって最も厄介で危険なのが、滑走路に対して真横から吹く「横風(クロスウィンド)」です。
離着陸の際、機体は滑走路に対してまっすぐ進入する必要があります。
しかし、強い横風を受けると、機体が風に流されてしまい、まっすぐな姿勢を保つのが非常に難しくなります。
各航空機には、安全に離着陸できる横風の限界値(クロスウィンドリミット)が定められています。
この限界値を超えると判断された場合、たとえ風速自体はそれほど強くなくても、安全のために欠航や出発地への引き返し(ダイバート)という判断が下されるのです。
向かい風は揚力を生むためむしろ安全に寄与する
意外に思われるかもしれませんが、飛行機にとって「向かい風」は、むしろ大歓迎の存在です。
飛行機が空を飛ぶために必要な「揚力(ようりょく)」という浮き上がる力は、翼に当たる風が速いほど大きくなります。
向かい風の中を進むと、何もしなくても翼に当たる風の速度が上がるため、より少ない滑走距離で、安定して離陸することができるのです。
凧揚げの時に、風に向かって走ると凧が上がりやすいのと同じ原理ですね。
そのため、ある程度の強さの向かい風であれば、欠航の直接的な原因になることは少ないです。
強すぎる追い風が滑走路のオーバーランを招く危険性
向かい風とは逆に、着陸時に特に嫌われるのが「追い風」です。
追い風を受けると、地面に対する飛行機のスピードがなかなか落ちません。
スピードが落ちないと、着陸してから停止するまでに必要な距離が長くなってしまいます。
もし滑走路の長さが十分でない場合、停止しきれずに滑走路をはみ出してしまう「オーバーラン」という重大な事故につながる危険性があるのです。
そのため、多くの空港では追い風成分が一定の基準を超えた場合、安全のために着陸を許可しない、あるいは使用する滑走路の向きを変更するなどの対策が取られます。
台風や大雪など風以外の天候が原因で欠航するケース
飛行機の運航に影響を与えるのは、風だけではありません。
台風や大雪、濃霧、雷など、様々な気象現象が欠航の原因となり得ます。
安全なフライトは、パイロットが空を飛ぶ技術だけでなく、地上の安全な環境が整って初めて実現します。
ここでは、風以外に欠航を引き起こす主な天候について解説します。
【視界不良】大雨や濃霧で滑走路が見えない
安全な離着陸のためには、パイロットが滑走路や誘導路をきちんと目で見えることが大前提です。
大雨や濃霧、吹雪などによって視界が極端に悪い場合、安全な操縦が困難になります。
各空港には、安全に離着陸するために最低限必要な視界の距離(最低気象条件)が定められています。
実際の視界がこの基準を下回ってしまうと、たとえ風がなくても、視界不良を理由に欠航や遅延が発生します。
特に、山間部や海沿いの空港では、霧による視界不良が起こりやすいです。
【滑走路の凍結】雪による路面コンディションの悪化
冬の時期に特に問題となるのが、雪による滑走路のコンディション悪化です。
降り積もった雪や、それが凍結したアイスバーン状態の滑走路では、タイヤがスリップしてしまい、安全に離着陸することができません。
車が雪道でスリップするのと同じですね。
空港では、除雪車が常に出動して滑走路の雪を取り除く作業を行いますが、降雪量が多い場合や、除雪が間に合わない場合は、安全が確保されるまで空港が一時的に閉鎖され、欠航や遅延となります。
【雷】地上作業の中断や落雷による機材への影響
夏場に多い雷も、飛行機の運航に大きな影響を与えます。
空港周辺で雷が発生すると、乗客の乗り降りや荷物の積み下ろし、燃料の補給といった地上の作業が、安全のためにすべて中断されます。
屋外で作業する地上スタッフの安全を守るためですね。
この地上作業の中断が、結果的に出発の遅れや欠航につながります。
また、飛行中の飛行機に雷が落ちることもありますが、機体は落雷を想定して設計されているため、通常は問題ありません。
しかし、機材への影響を点検するために、目的地を変更したり、折り返しの便が遅れたりする原因になることがあります。
「条件付き運航」と表示された場合の意味と対処法
空港の電光掲示板や航空会社のサイトで、「条件付き運航」という表示を見て、ドキッとした経験はありませんか。
「飛ぶの?飛ばないの?」とはっきりせず、一番ヤキモキする状況かもしれません。
ここでは、この「条件付き運航」が一体どういう意味なのか、そしてこの表示が出た時に私たちがどうすれば良いのかを解説します。
欠航ではないが引き返す可能性があるというサイン
「条件付き運航」とは、「出発はするけれど、目的地の天候次第では着陸できずに、出発した空港に引き返すか、別の空港に着陸する可能性がありますよ」というサインです。
つまり、まだ欠航が決定したわけではありません。
航空会社としては「トライはしてみます」という意思表示です。
出発地の天候は問題なくても、到着地の天候が悪化している、あるいは悪化が予想される場合によく使われます。
この表示が出た場合は、無事に目的地に着ける可能性も、そうでない可能性もあると理解しておく必要があります。
「天候調査中」との違いは?
「条件付き運航」と似た言葉に「天候調査中」があります。
「天候調査中」は、その便を運航させるか、それとも欠航にするか、航空会社がまだ最終判断を下せずに情報を集めている段階を示します。
「条件付き運航」よりも、欠航になる可能性がやや高い状態と言えるかもしれません。
フライトの時間が近づくにつれて、この「天候調査中」の表示が、「平常運航」「条件付き運航」「欠航」のいずれかに変わっていきます。
こまめに運航情報をチェックすることが大切です。
飛行機の欠航はいつ、どのタイミングで最終決定されるのか
欠航の最終決定が下されるタイミングは、ケースバイケースで一概には言えません。
台風のように進路が予測しやすい場合は、前日の夕方や夜には翌日の便の欠航が早々と決まることもあります。
一方で、急な天候悪化や機材トラブルの場合は、出発時刻の直前になってから、急に欠航が決まることも少なくありません。
一般的には、出発の1〜2時間前には最終的な判断が下されることが多いようです。
ヤキモキする気持ちは分かりますが、航空会社が安全のためにギリギリまで最善の判断をしようとしている結果だと理解しましょう。
自分の乗る便の最新の運航状況を確認する3つの方法
天候が怪しい日には、自分の乗る便が飛ぶのかどうか、情報収集が欠かせません。
間違った情報に振り回されないためにも、信頼できる方法で最新の状況を確認することが重要です。
ここでは、最も確実でスピーディーな運航状況の確認方法を3つ紹介します。
【確実】航空会社の公式サイト・公式アプリで確認
最も確実で早く情報を得られるのは、あなたが利用する航空会社(JAL, ANA, LCCなど)の公式サイトや公式アプリです。
トップページに「運航状況のお知らせ」といった項目があるので、そこから自分の便名や路線を検索しましょう。
運航状況に変更があれば、ここに一番早く情報が反映されます。
予約時にメールアドレスを登録しておけば、欠航や遅延が決まった際に航空会社から直接お知らせメールが届くこともあります。
まずは公式サイトを確認するのが基本中の基本です。
【リアルタイム】空港の公式サイトや電光掲示板をチェック
すでにもう空港にいる場合は、出発ロビーにある大きな電光掲示板(フライトインフォメーションボード)を確認するのが一番手っ取り早いです。
各便の状況がリアルタイムで更新されており、「平常運航」「遅延」「欠航」「搭乗手続中断」といったステータスが一目で分かります。
また、各空港の公式サイトでも、同様のフライト情報を確認することができます。
航空会社のサイトと合わせてチェックすると、より確実性が増すでしょう。
電話での問い合わせは最終手段に
航空会社の問い合わせ窓口に電話で確認する方法もあります。
しかし、台風や大雪などで欠航便が多数出ている日は、電話が殺到して全く繋がらないことがほとんどです。
何十分も待たされた挙句、得られる情報は公式サイトと同じだった、ということも少なくありません。
オペレーターの方も対応に追われて大変です。
電話での問い合わせは、インターネットでの確認がどうしてもできない場合の最終手段と考え、まずは公式サイトやアプリで確認するようにしましょう。
もし欠航が決定したら?振替・払い戻しの手続きを解説
残念ながら、自分の乗る便の欠航が決定してしまったら、どうすれば良いのでしょうか。
焦る必要はありません。天候が理由で欠航した場合、航空会社は乗客のためにきちんと救済措置を用意してくれています。
基本的には「後続の便への振替」か「航空券代金の払い戻し」のどちらかを選ぶことになります。
ここでは、その具体的な手続きについて解説します。
【振替】同航空会社の後続便へ無料で変更する
もし、旅行の予定を続けたい場合は、後続の空席がある便に無料で振り替えてもらうことができます。
手数料などは一切かかりません。
振替は、欠航が決まった便の予約を持っていた人が優先されるため、できるだけ早く手続きを済ませることが重要です。
空港のカウンターは長蛇の列になることが多いので、航空会社の公式サイトやアプリから手続きするのが断然おすすめです。
ただし、振り替えられるのは、自分が予約していた航空会社の便に限られます。他社の便への振替はできません。
【払い戻し】購入した航空券の代金を全額返金してもらう
旅行自体をキャンセルする場合は、支払った航空券の代金を全額、手数料なしで払い戻してもらうことができます。
これも、航空会社の公式サイトやアプリから手続きが可能です。
払い戻しの手続き期間は、航空会社によって異なりますが、一般的には元の搭乗予定日から10日〜30日以内と定められています。
空港のカウンターで手続きすることもできますが、こちらも非常に混み合うため、後日落ち着いてからネットで手続きする方がスムーズです。
急いでその場で結論を出す必要はありません。
旅行代理店で予約した場合の連絡先と注意点
航空会社の公式サイトではなく、楽天トラベルやじゃらんなどの旅行代理店を通じて航空券を予約した場合は、少し注意が必要です。
この場合、振替や払い戻しの手続きは、航空会社ではなく、予約した旅行代理店に連絡して行うのが原則となります。
航空会社のカウンターに直接行っても、対応してもらえないケースが多いです。
まずは自分がどこで予約したのかを正確に把握し、その予約元のウェブサイトを確認するか、問い合わせ窓口に連絡しましょう。
ホテルとセットになったパックツアーなどの場合は、対応が異なる場合があるので、契約内容をよく確認してください。
飛行機が欠航になる風速のまとめ
- 飛行機が欠航する風速の絶対的な基準はなく、風速15m/sがひとつの目安。
- 航空会社は風速、風向き、視界など多くの要因を総合的に見て運航を判断する。
- 欠航の判断は航空会社や機体の大きさによっても異なる。
- 風速の強さよりも、滑走路に対して真横から吹く「横風」が最も危険視される。
- 飛行機にとって「向かい風」は、離陸を助けてくれる安全な風。
- 「追い風」は着陸時のスピードが落ちにくく、オーバーランの危険がある。
- 風以外にも、大雨や濃霧による視界不良も欠航の大きな原因となる。
- 冬場は、滑走路の積雪や凍結が原因で欠航することがある。
- 雷の発生は、地上作業を中断させるため遅延や欠航につながる。
- 「条件付き運航」は、出発しても引き返す可能性があるというサイン。
- 運航状況の確認は、航空会社の公式サイト・アプリが最も確実で早い。
- 天候が理由で欠航した場合、「振替」か「払い戻し」を手数料なしで選択できる。
- 振替や払い戻しの手続きは、混雑を避けるため公式サイトで行うのがおすすめ。
- 旅行代理店で予約した場合は、航空会社ではなく代理店に連絡する。
